地理を観よ

山口県の萩を訪れた。三方を山に囲まれ、日本海に面した街である。

明治維新胎動の地。昨年には明治維持日本の産業革命遺産として5つの世界遺産も登録された。

そんな歴史の町として知られる萩が今、ジオパークを目指している。

市街地の外れに、笠山という半島状の小さな山がある。山頂からは市街地や日本海に浮かぶ島々が望める。

その麓には明神池という池がある。観光客が池の魚にエサをやる光景を目にして驚いた。寄ってくる魚が、イシダイ、ボラ、エイといった海の魚なのだ。明神池は海水の池であった。

実は笠山は約1万年前に噴火をした火山である。その際に海が埋め残されたのが明神池だ。山頂から見た島々も火山。萩は、山側も含めて40もの火山に囲まれた地域だという。

城下町の姿が残る市街地も、火山性の大地を阿武川が削り、その土砂がたまった三角州。地形を見極めた街づくり、水害と共に生きる知恵が随所に見られる。

地を離れて人なく、人を離れて事なし。故に人事を論ぜんと欲せば、先ず地理を観よ。

萩で松下村塾を開いた吉田松陰の言葉である。 歴史の町・萩は、大地と人の共生の産物であった。