里山の黒糖
砂糖はどうやって作られるのか。サトウキビを搾って煮詰める、という程度の発想だったが、それでは飴ができるだけであろう。
昨年、室戸のとある集落で黒糖づくりに出会った。この時期だけの光景である。搾り汁をひたすら煮詰め、石灰を入れて酸を中和し、さらに煮詰める。飴状になったら激しく撹拌する。すると結晶ができてシャリシャリの砂糖になる。目から鱗が落ちた。
工程は5~6時間もかかる上に重労働。今年は若者数人で手伝いに行ったりもした。
優しい甘さと濃厚な香りのこの黒糖、特に正月、餅につけて食べるのが美味いのだそう。試してみると、なるほど手が止まらない。黒糖は太りにくい、と聞いたがこれでは結局太るではないか。罠か。
常夏の沖縄と違い、冬のある室戸ではサトウキビの収穫がこの時期に限られる。そのため製糖も冬だけなのである。季節に合わせて野菜を育て、炭を焼き、柚子の収穫が終わった頃に黒糖を炊く。気候と二人三脚の生活が営まれてきた。四季の国、日本で暮らすとはこういうことであろう。 室戸の製糖業は、今はたった一軒だけ。里山の暮らしごと、残していく方法を模索中だ。