鯨館
室戸の道の駅にある「鯨館」を室戸市がリニューアルしたと聞き、訪れた。かつては、室戸の一時代を築いた捕鯨の歴史を貴重な資料とともに紹介した施設で、生々しさの中に室戸の魂を感じられる場所であった。
新しい館内にはデジタルアート、バーチャルリアリティなどが得意げに鎮座していた。デジタル技術の見本市のごとく。都会風に味付けられた姿に、室戸の魂はどこへいったのだろうかと、悲しい気持ちで帰路についた。
室戸に移り住んで3年近くになるが、末端地方の実情を肌で感じた。地方を元気にするといって国や県から突然大金が与えられ、困った自治体は都会の業者に丸投げする。都会の考え方や手法が地域の個性を消し去り、ますます地域は消耗するという構図にしか見えない。
将来に不安を抱えながらどうしたらよいかわからない住民と、目先の実績に取り憑かれ、箱物建設やイベント地獄で疲弊する自治体のすれ違いももどかしい。
地方には地方の時間が流れている。都会の尺度に振り回されるなんて土佐人らしくないではないか。これぞ「いごっそう」と呼べる地域の生き様を見てみたいものである。