美味しい野山

ハマアザミを一束いただいた。室戸では根を食べる。定番は天ぷら。シャキシャキとした食感が心地良い。鋭く尖った葉からは想像できない旨さだ。

室戸に住み始めて2年が経つ。県外で生まれ育った私にとって、ここの食文化は一番の衝撃だった。

ハマアザミ、イタドリ、タケノコ。なんといっても香りが良い。生きている喜びを感じる。

この時期、地元の人と車に乗ると、会話が3分と持たない。道端のイタドリを見つけては車を停めるからだ。恐るべき情熱と動体視力である。

仕事柄、県外から来た観光客を案内することが多い。自然の中を散策し、木々や花に触れては癒やされている姿が微笑ましい。

これが、地元の人と歩くと同じ道でも景色が違って見える。これは美味しい、あれは食べられない。四六時中そんな会話が続き、帰る頃には山菜で両手が塞がっていることもしばしば。

美しい大自然は、室戸の人たちには美味しい宝の山に見えているに違いない。

新聞やテレビは連日、熊本の惨状を報じている。日本列島は地震や火山、台風、豪雪など自然災害が耐えることがない。 自然の一部としてたくましく暮らす室戸の人の姿から、日本人らしく生きる術を教わる日々である。