暖かい冬

暦の上では冬である。私が暮らす海沿い地域は常緑植物が多く紅葉を見る機会は少ない。それでも野山の彩度はだいぶ落ち着き、空も高く感じるようになった。

室戸で迎える三度目の冬。メディアで連日伝えられる北国の雪の話題に、三年前まで住んでいた東北の痺れるような寒さを思い出す。南国高知は、本当に暖かくて過ごしやすい。

この時期になると「冷やいねえ」から会話が始まる。暖かい冬に喜びを感じている私は、その返答がぎこちなくなる。正直に「暖かいですよ」と答えれば変人扱いされてしまう。先日も、中学校の野外授業に半袖で赴いたところ、生徒たちから数奇の目を向けられてしまった。

最近はなるべく服装にも気を使い、会話の中では「気温がだいぶ下がりましたよね」と、相対的評価にすり替えて答えるという術を覚えた。

元々の出身は静岡の海沿いの町。冬の気温は今とそれほど変わらない。子どもの頃を思い返すと、冬は凍えて過ごしていた。東北で過ごした数年間で寒さへの耐性がついたようだ。 人間の環境適応力とはすごいものだ。もう数年この暮らしを続ければ、私も室戸の冬を寒がることができるようになるだろうか。